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美少女戦隊ブレザーナイツ 第3話 4



土がむき出しになった足場の悪い隠し通路を通って、テロの実行犯たちは救出隊とともに仲間の待つ隠れ家へとたどり着いた。途中でカモフラージュのためにいくつか通路を塞ぎ、追跡を困難にするジャミング装置を地面に埋め込んだ。うまくいけば追っ手を巻いて逃げ切れるだろう。
 数人が拘束されたが、幸い隊長は健在だった。拘束された者たちも今頃は口内に埋め込んだ自裁コードを噛み砕いているはずだ。一人でも帰還すれば失敗ではない。そして今回は思わぬ獲物が手に入った。
「無事だったみたいだな」
 隠れ家に入ると控えていたメンバーが迎える。互いに手の甲に彫った鳥羽の刺青を見せ合う。
「ご苦労だったが、すぐに移動するぞ……ってそれはなんだ」
 最後に入ってきた男が肩に抱えているものを見て、思わず指をさす。
「ん、ああ、こいつか」男は肩に抱えた少女を――少女の尻を見る。「いいケツしてるだろう」
 男の肩に抱えられているのは制服姿の少女だった。気を失い、後ろ手に電子錠をかけられ、ぐったりとしている。肩の上で揺らされてきたため、制服の短いスカートがめくれ上がり、出迎えた男からは真っ白なパンティが丸見えになっている。
「あっちの部隊にいた奴らの一人だ。よく分からんが、女子高生みたいだな」
「部隊って、一般人じゃないのか」と男は至極まっとうな質問をする。
「違う。間違いなく戦闘要員だ。数人がこいつ一人にやられた。相当な腕だった」隊長が親指で背後を指しながら言った。「銃弾を素で避けやがった」
「面倒なことにならないか」出迎えた男は顔をしかめる。女子高生の特殊部隊員とは。
 少女を抱えている男は笑いながら首を振り、「大丈夫さ、こいつが『特殊な何ものか』なら人質にして交渉に使えるし、それに」そう言って男は抱えたほうの腕を折って、奈緒の形の良い尻を撫でた。「ガキだが、なかなかいい女だ」
 そう言われて、出迎えた男は再び少女のの露わなパンティと、そこに浮かび上がる女のふくらみに目をやる。すらりと伸びた脚は彼女が相当なスタイルの持ち主であることを示している。だが彼が決定を下したのは、中継基地に控えている上司が以前こぼしていた話題を思い出したからだった。わずかな思案の後、「わかった」と彼は言った。「とにかく行こう」
 男に率いられて実行犯たちは移動を再開する。痕跡を残さないため部屋の爆破は諦める。
 暗い道を動きながら、男たちの間には共通の考えが浮かび始めていた。偶然にも捕らえることの出来たこの少女をどうするのか。生かすのか、殺すのか。生かすならば、どう生かすのか。
(なんだか分からんが、面白いことになりそうだな)
隊長の男は後ろを振り返る。暗闇の中で少女のパンティが白く瞬いていた。


 篠崎の演説は美也子にとっては退屈だが上手かった。9課の必要性を関東区のおかれた現状を踏まえて強く説き、有無を言わせぬ高圧的な調子で畳み掛ける。聴衆は訳が分かろうと分かるまいととにかく圧倒され、うなずいてしまう。時代が時代なら――今がそのときだという可能性もゼロではない――篠崎は9課だけでなく政府のトップに立てたのではないだろうか。
 盛大な拍手とともに篠崎が演壇を降りる。美也子もとりあえず手を叩いておく。美也子は篠崎のことが苦手だった。美也子たち3人を投入することに否定的で、今でも美也子たちへの態度は厳しい。
「相変わらずだな、あの人は」甘楽がつぶやいた。「だから誤解されやすいんだろうが」
 美也子は頭ひとつ分以上背の高い甘楽を見上げる。
「篠崎さん、博士とは長い付き合いなんですよね」
「らしいな。詳しいことは知らんが」
 友人と呼べるほど博士と篠崎が親しげに言葉を交わしている姿は見たことが無い。だが9課の研究開発室に博士を呼んだのも、渋りつつも美也子たち3人の配属を許可したのも篠崎だった。美也子たちの知らないところで、何かしら関係があるのかもしれない。
「まあ、悪い人じゃない」と甘楽は言った。「少なくとも、信頼に足る人だ」
 それには美也子も同意する。任務への厳格な態度を見れば、嫌と言うほど分かる。博士もまた、気難しいが感心するほど職務に実直な男、と美也子たちに言ったことがある。そうしたところで篠崎への苦手意識が消えるわけではなかったが。
「次の講演者は――」と美也子は手元の資料に視線を置く。「えーっと」
「神田博士」甘楽が言った。「水谷博士の元同僚で、装甲開発の初期メンバーの一人だ」

美少女戦隊ブレザーナイツ 第3話 3



 一時休憩になり、美也子は甘楽に連れられる形でホールを出た。
 会議場は新宿の国政館にあり、ガラス張りのロビーからは忙しそうに行きかう政府関係者の車が往来する様子がよく見えた。美也子は通路の座り心地の良いベンチに腰掛けながら紙コップでジュースを飲み、ほっとひと息をついた。さすがに今日は制服ではなくスーツを着用していたが、それでも可憐な容姿が男性の視線を 惹きつけていた。
「疲れたか」と前に立つ甘楽が言った。「退屈だろう」
「はぁ」と美也子は苦笑いする。「でも面白い話も聞けましたよ。最新の兵器とか陣形研究とか」
 保護者である水谷博士のプレゼンもあり、強化装甲の進化に関するレポートが喝采を受けていた。それを聞いていると美也子もうれしく、鼻が高かった。
「でも、あの話はありませんでしたね」
 あの話、と聞いて甘楽もすぐに分かったようで、「そうだな」とだけ答えた。
 先日の拉致未遂事件ののち、美也子たち3人は上層部に呼び出され、長い時間聴聞を受けた。身も心もくたくたになったが、美也子は入瀬たちが口にしたこと以外なるべく答えないようにしながらなんとかそれを乗り切った。聴聞官たちは終始威圧的な様子で、美也子たちに質疑権は一切与えられなかった。そして最後に、今回のことは一切他言無用と言われ、美也子たちは解放された。万が一他者に漏らした場合は「相応の処罰」を受ける。そのため博士や救出してくれた甘楽とさえ、「あの話」について具体的に話すことはなかった。
「気にするな。今はできることをやっておけ」甘楽は言った。
「そうですね。まあ、それしかできませんし」顔を上げると甘楽と目が合い、慌てて視線を逸らす。ジュースの黄色い水面がわずかに波打った。
 9課の隊長と一人の美少女。珍しい組み合わせに、周りの好奇な視線が向けられる。基本的に女子高生である美也子がこの場にいるのはありえないことで、会場に入るときも一度事情を知らない警備員に止められもした。自分が悪いわけではないがどうしてだか美也子は恥ずかしくなって、ようやく通されると小走りにホール内の席へと急いだ。
 第2部の始まりを告げるコールが鳴り、外にいた一団がまたホールへと戻っていく。美也子も立ち上がり、甘楽とともにホールに入る。
 歩きながら、美也子の中にわずかな不安が芽生え始めた。それはまだ明確ではなかったが、ちくりと美也子の胸を刺した。幼い頃から常に3人で暮らしてきたために生まれた、予感のようなものだった。
「2人とも大丈夫かな」
 隣の甘楽にも聞こえないぐらいの小声でそうつぶやいたとき、壇上に9課主任の篠崎が現れた。


「奈緒は!? まだ分からないの!?」
 臨時に設置されている作戦本部の中で、沙希は激しく息巻いていた。
「落ち着いて。今解析班が全力で追跡している」バックアップにまわっていた男が沙希をなだめる。しかし姉妹のような親友をさらわれた沙希の勢いに抗せるわけもなくあたふたしている。
「脱出経路自体がダミーだったのか、それとも実行犯たちにも知らされていなかったのか、いずれにせよ周到に準備していたようだな、ぬかった」ディスプレイを前に激しくキーをたたく情報解析官。
 さらわれたのは9課の隊員だ。これは責任問題だぞ――そんなこと言っている場合じゃないでしょう――横でそんなやり取りを聞きながら爆発しそうになり、沙希は表に出た。
 自分が先に爆弾の気配に気づいていれば奈緒は反対側へと避けられただろう。容易に。結果、犠牲になったのは自分ではなく奈緒。
「くっそ!」とコンクリートの壁にこぶしをぶつける。硬い壁に大きくひびが入る。制服姿のままであることを思い出し、舌打ちする。「美也子に何て言えば――」
 背後に視線を感じ、はっと沙希は振り返る。沙希をなだめていた男が静かに立っていた。とても真剣な面持ちで。

美少女戦隊ブレザーナイツ 第3話 2


「抜け道を特定した、先回りしてくれ」との情報と命令を受けて、沙希と奈緒は数人の部隊とともに移動する。バースト後の突貫復興事業の弊害か、高さの異なる棟が複雑に重なって作られたビルは地図を見ても全体像が上手くつかめず、内閣府の総合データベースにも情報がない。掃討部隊も敵を追跡しながらの手探り状態で進んでいた。
「一度地下に入ってから離れた棟に出られるようですね」と奈緒が装甲車内のパネルを見ながら言った。「事前に用意していたんでしょうか」
「逃げ道の確保はテロの基本だからね」と沙希が言った。

 今回は刑務所に収容されている囚人の釈放を求めて攻撃行動が起こされた。本来なら9課が出動する事案ではないのだが、慢性的な人員不足のため沙希たちが派遣されることになった。
 作戦は順調に経過している。すでに数人を拘束し、こちらへの被害はほぼゼロ。内容としては普段と変わらない掃討作戦だった。
 沙希と奈緒は後方に回り、前面より突入する部隊とで、逃走する武装集団を囲い込む。2人は逃走経路の中継点と目されるビルの地下施設から、狭い緊急用連絡通路に入る。制服姿の少女たちが暗い道を足早に駆けていく。後ろには銃を構えた部隊員が二人に指示をしながら付いていく。不思議な構図だがこれがもっとも安全なのだ。
 沙希は前を歩きながらちらちらと背後からの視線を感じる。2人ともまだ若いようだ。あとで名前聞いておこっかな、と沙希はひそかに思う。
 前面部隊から連絡が入る。後1分で敵と接触する。合流地点の扉の前に到着する。
「さて、いこっか」沙希が前に出る。
「狭い場所だ。気をつけろ」部隊員の一人が言った。
 軽く手を振って沙希は重い扉を開く。コンクリートで囲われた部屋から冷えた空気が流れてくる。
「来ますよ」奈緒が言った。
 少しずつ銃の音が近くなっていく。
「敵が来てから最低5秒間は伏せて」沙希は後ろの2人に言った。「その後でバックアップ、お願いします」
 了解、と部隊員の2人はうなずく。
 足音と怒号が響く。ドアに当たる音。
 そして勢いよく兵士たちが飛び込んでくる。

「!?」

 同時に前に出た沙希と奈緒を目にして驚愕し、銃口を向けて数発打ち込む。沙希は体を横に向けてそれをよける。弾は後ろで伏せている2人の上を通過して行った。
 次の攻撃間を与えずに敵の手首をつかみ、銃のトリガーに自分の指を突っ込みながら、相手の体を振り回し、壁に叩きつける。その間に後ろから放たれた弾をよけ、敵を誘い込むように部屋の中ほどまで戻る。向こう側からは前面部隊が追い込みにかかっている。
「観念してください!」
 奈緒が後から入ってきた敵を押さえ込み、股間を蹴り上げる。うずくまった兵士を、バックアップの2人が銃床で叩きのめす。
 抵抗をやめろ、と言う声が前面部隊から聞こえる。その通りだね、と思いながら沙希はさらに向かってくる敵の腕をねじりあげた。

 そのとき――
 
 カツン、と音がした。銃撃の騒音で満たされた部屋の中でも、それは一直線に奈緒の耳の奥まで届いた。
(――これは)
 振り向いて、部屋の横壁を見る。何の変哲もないコンクリートの壁。その先から、音が鳴った気がした。
 背筋に悪寒が走るのと声を出すのはほぼ同時だった。
「沙希さん!」
 予感が突き抜ける瞬間に奈緒は2歩踏み出し、沙希の体を入ってきた扉のほうへと突き飛ばした。
「え、えっ!?」
 突き飛ばしたのが奈緒であることに沙希が気づく前に、爆発が起こった。
 腕で風圧をさえぎりながら、バックアップの2人とともに通路に尻餅をついた沙希の目に、頭をかばいながら壁にたたきつけられる奈緒の姿が煙の間に映った。
「なっ」
 吹き荒れる爆風に押されながらも立ち上がろうとしたとき、鼻の奥に刺激が走った。続いて体全体に微弱な痺れが走り、沙希は床に膝をつく。
(麻痺剤……爆弾と同時に打ち込んだの?)
 すぐに呼吸を抑えたためそれほど多くは吸い込んでいなかった。だが立ち上がるにはしばらく時間がかかりそうだ。向こうの方からもさがれ、と怒号が聞こえる。
「な、奈緒っ」声をかすらせながらも必死で奈緒の名前を呼ぶ。
「危険だ、さがって」と部隊の男が沙希の肩を押さえ、慎重に前に出る。
 煙幕は少しずつ収まってきていたが、まだ部屋の中はもやがかかったように白い。それでも部屋の中に誰もいないことが沙希にも分かった。

美少女戦隊ブレザーナイツ 第3話 1

chapter1

 ドアをぶち破って侵入した途端に、激しい銃弾の雨が前方と上方から降り注いでくる。
「わわっ!」と沙希は横に転がりながら弾をかわしていく。不意を打たれながらも、後続する部隊が突入しやすいような位置取りをしながら動く。目視と勘で弾の来る方向を見定め、壁に沿ってジグザグに移動する。
 背後から銃の音がする。味方の援護により敵の弾幕が徐々に和らいでいく。沙希は勢いを得て前に出ると、退却しようとする敵の一人を頭から床に叩きつける。続く前方からの威嚇射撃を飛び跳ねて避けると、そのまま後を追おうとする。
「沙希さん!」そこで聞き慣れた声が呼び止める。「第1段階は終了です。下がってください」
「はーい」沙希は不服そうにしながらもおとなしく従う。彼女の横を、武装した部隊が走り抜けていく。
 沙希は一度外に出て待機する。奈緒がいつもと変わらぬ微笑で迎えてくれる。奈緒からコップに入った飲料を渡され、それに口をつける。中ではまだ激しい銃撃戦が続いているが、しばらくは特殊部隊の仕事だ。
「相手に装甲がないだけでずいぶん楽だよね」沙希は一息ついて言った。「張り合いないっていうか」
「そんなことありませんよ。相手が何を隠し持っているか分かりませんから、油断は出来ません」沙希は横で銃を抱えて直立している、待機部隊の一人ににこりと微笑みかけ、「掃討戦はこちらの方々の専門ですから。私たちはそれをしっかりサポートするんですよ」と言った。彼は奈緒の笑顔に落ち着かない様子で銃を構え直す。
 武装した特殊部隊の中で2人の姿は際立って異質に見える。二人は若く美しく、そしてブレザーの制服を身につけている。制服のスカートはとても短く、若さを見せつけるように長い脚が露になっている。それでなくとも制服姿の美少女たちには惹き付けられる無垢な色香が漂っている。待機する部隊員たちは目のやり場に困りながらも、時折少女たちの無防備な太ももに視線を向けていた。


 一方、沙希と奈緒のリーダーである美也子は、内閣府の戦闘部隊を集めたセミナーに参加していた。正規軍から各府、庁、省直属部隊の、小隊長以上が参加する年に数回の会議で、美也子は「ブレザーナイツ」の隊長として出席を義務づけられていた。沙希と奈緒がそうであったように、会議場で美也子は異分子といえるほど浮いていた。そのためこの美しい少女は肩をすくませながら体を縮めてつとめて空気のように振る舞い、壇上で息を荒げながら演説する陸軍大佐や官公庁のお偉方の話を聞いていた。これなら任務についているほうがましだな、と心から美也子は思った。一応「保護者代理」である甘楽が同伴していたが、先ほどから上層部に呼び出されて席を外していた。甘楽が隣にいるとそれはそれで緊張するからなんともいえない状況ではあった。
(2人ともちゃんとやってるのかなぁ)とリーダーらしく部隊員の心配をする。奈緒も沙希も部隊の仲間以前に子供の頃からともに育ってきた姉妹のような存在だから、美也子の心配には個人的なものが大きかった。

美少女戦隊ブレザーナイツ第2話 23

(――なんだ)
 入瀬へ追撃をかけようとしたとき、甘楽は異変に気づく。
 足元に、何かがいる。いや、「ある」。
「潮時か」入瀬が言った。「残念だ」
 甘楽は本能的に身を引き、入瀬から距離をとった。
 建物全体が大きく揺れる。床全体に稲光のような亀裂が広がっていく。
「全員退避だ」甘楽は部隊全員に向かって言った。「美也子、ここから外に出ろ」
 甘楽の言葉を受け、美也子たちは犬たちとともに壁にあいた穴へと向かう。入瀬たちの部隊は誰一人3人を追ってこない。

 美也子たちが穴に入ったことを確認すると、救出隊も退却していく。
「甘楽」
 背後からの声に、甘楽は振り返る。
 床一面に広がった亀裂に埋もれるように入瀬がたたずみ、甘楽を見据えている。
「あんたと戦れてよかった。楽しかったよ」
「決着は次の機会にか」
 入瀬の体が沈んでいく。甘楽があたりを見渡すと、いつの間にか崔十や灯銘の姿がなく、兵たちも残り少なくなっている。
「どうかな」入瀬の声がかすんでいく。かろうじて聞き取れた最後の言葉。「今度は、あいつが――」
 相手の姿が完全に隠れたのを見届けると、甘楽も穴に入る。深追いはしないほうがいい。美也子たちを保護することが最優先だった。


 前後を守られるようにして美也子たちは外に出る。建物の外にも何人かの隊員が控えており、美也子たちを装甲車のほうへ誘導した。
 激しい揺れは次第に収まっていったが、老朽化した建物は衝撃に耐えられずにゆっくりと崩れ落ちていく。
「甘楽さん!」
 美也子は振り返って甘楽の姿を探す。
 上の階の壁が割れて地面に落ちる。装甲車のライトが付近を照らす。
 何秒かの沈黙が果てしない時間に思える。
 だが瓦礫を踏む音が聞こえ、続いてライトの光の奥から人影が現れる。
 甘楽が瓦礫の山を降りたところで、建物が半壊する。突風が一瞬、美也子たちのところまで届く。
「かっこつけすぎっす」9課の隊員が甘楽に言った。
「逃げられたな」甘楽は埃を払いながら言った。「何を使ったか知らんが、こちらが考えていた以上に入り込まれていた」
 甘楽は美也子たちのほうを向く。「大丈夫か」
「は、はい」美也子はうなずく。「あの、怪我を……」
「大したことはない」甘楽はそう言って装甲の裂けた右腕をはたいた。影の下からうっすらと血がにじんで見えた。「とにかく、帰るぞ。しばらくすれば聴聞があるだろう。それまで休め」
 甘楽は美也子の頭に手のひらを当ててぽんと軽く叩いた。
 そのまま甘楽は前方の車両に向かう。美也子たち3人は護衛されるように真ん中の車両に乗り込んだ。

 硬い座席に腰掛けると疲労がどっと押し寄せる。すぐには立ち上がることができそうになかった。
 隣の沙希は奈緒の肩にもたれるようにしてすでに寝息を立てている。奈緒もうつらうつら目を閉じかけている。
「結局、なんだったのかな」美也子は自問するようにつぶやいた。
 越種と美也子たちに何の関係があるのだろう。彼らをまとめている「上」の意図は何なのだろう。
 甘楽は何かを知っているのだろうか。あるいは博士は。
  
 甘楽の感触が少しだけ残った頭頂部に手を当てる。
 わずかな温かみを感じながら、美也子も眠りに落ちていった。


 第2話 終
プロフィール

Author:犬江
オリジナル美少女戦士拷問・凌辱小説。


第1話

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inueshindayu■gmail.com(■を@に変えてください)まで。

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